人工透析

当院の透析治療

血液透析療法(HD)

腎臓の機能が著しく低下すると、尿によって体の外に排出していた老廃物が体の中に溜まってしまい尿毒症症状(食欲不振、倦怠感、下痢や下血、皮膚の褐変色、頭痛、視力低下など様々な全身症状)を起こします。 また、尿量も減ってしまうことで飲食した水分が体の中に溜まってしまい、心不全症状(全身の浮腫みや呼吸困難、血圧の上昇など)が起こります。

【画像】人工透析

人工透析とは

人工透析とは、機能不全にまで陥った腎臓にかわって体内の老廃物や過剰な水分を取り除く手法であり、「低下してしまった腎臓の機能を人工的に代理する治療」です。 人工透析は、腎臓を回復する治療ではなく、あくまでも腎臓の代替治療ですので、基本的には終生継続した治療が必要になります。 人工透析が必要となった方は、ショックを受け、不安に駆られることもありますが、人工透析は失われた腎機能を代替して尿毒症の症状を無くし、これから先の人生を充実させるための治療です。当院では、一般的な血液透析(HD:hemodialysis)治療の他に、オンライン血液透析濾過(HDF)や間歇補充型血液透析濾過(IHDF)などの透析治療も行い、透析患者さん個々に合った至適透析(※1)を第一に心がけて治療を行っていきます。

また、透析が開始されると保存期腎臓病内科の外来が終診となることが多いですが、慢性腎臓病が治った訳ではありません。 当院では引き続き院長が透析経験の豊富なスタッフと一緒に患者さんの透析を含めた総合的な治療に対して、透析条件(透析膜、透析血流量、透析薬剤など)の確認や、日々進歩する腎臓病関連の内服薬の調整、合併症の予防・管理などを継続して行い、患者さんの健康や長生きのお手伝いに尽力させていただきたいと思っております。

  • 1 至適透析とは
    「死亡率を可能な限り低くする透析」といった概念です。 標準化透析量(Kt/V)あるいは尿素除去率(URR)などの透析効率において「死亡率(死亡のリスク)を可能な限り低くする透析量のレベル」を至適レベルと定義し、それを追求するものです。日本透析医学会が推奨するレベルを上回る条件を目指して適正な透析を行うことで毒素を除去できた分、牛肉や豚肉といった蛋白質もしっかり取ることができます(蛋白質1g~1.2g×体重/日)。栄養摂取の見直しにより血清Alb値といった栄養状態を改善させることは免疫力を高め、フレイル(高齢者の虚弱体質)に代表される様々な合併症を予防できます。
【画像】血液透析

オンライン血液透析濾過(HDF)

HDFとは、Hemo Dialysis Filtrationの略で、通常の透析では取り除けず体内に蓄積されてしまう低中分子物質の老廃物(β2-ミクロログロブリン(※2)など)の除去を行うことで心臓への負担の軽減、血圧の安定化、かゆみや四肢疼痛の改善、残存腎機能の保護、余命やADLの向上をはかることができます。 HDFのなかでも、オフラインHDFとオンラインHDFという方法があります。 オフラインHDFは、瓶や補液バックに入った薬剤を補充液として使用するので濾過するために足される補充液量は少なく、オンラインHDFは、透析液をそのまま補充液として使用するため、濾過するために足される補充液量が多くなります。 そのため、オンラインHDFのほうがより多くの濾過をかけることができ、より多くの老廃物を取り除くことができるのです。

ただし、オンラインHDFを行うには、きれいな透析液を使用することが絶対条件ですので、厳重な透析液の水質管理が必要になってきます。2012年よりオンラインHDFに使用する透析液についてはより厳しい水質基準が定められており、当院では定期的に毎月水質検査を行っております。清浄度においては、学会基準を満たすオンライン補充液(online prepared substitution fluid)と呼ばれる無菌かつ無毒な状態を維持した透析液を使用しております。

  • 2 β2-ミクログロブリンとは
    長期間透析治療を受けられている患者さんに起こりやすい合併症の1つでアミロイドーシスがあります。 これはβ2-ミクログロブリンという物質を原料とするアミロイド線維が関節や骨に沈着して神経を圧迫することによって生じる骨・関節障害の総称で、手の痺れや、手指の動きの障害、肩の痛みといった症状が現れてきます。 例えば、手首の靱帯や腱の滑膜にアミロイド線維が沈着すると、周囲に炎症が起きて近くの正中神経を圧迫するため、手指の痛みや痺れ、親指の動きに支障をきたします(手根管症候群)。 オンラインHDFはこのアミロイドーシスの原因であるβ2-ミクログロブリンを積極的に取り除き、合併症を予防することができるのも特長です。
【画像】オンラインHDF

間歇補充型血液透析濾過(IHDF)

IHDFとは、Interminttent Infusion Hemodiafiltrationの略で、間歇補充(かんけつほじゅう)型血液透析濾過という新しいタイプの透析療法です。 一定時間毎、自動的に透析液を加えて濾過・補充を断続的に行い、血液中の老廃物や水分を除去します。 具体的には30分に1回、100~200mL補液します。 補液された透析液の分は除水をするので体内に残る事はありません。 間歇的に補充液を加える小規模のHDFがIHDFです。 主に、末梢循環障害の改善、膜性能の劣化抑制、血圧低下予防の効果があるといわれています。

通常の透析では、治療の進行に伴い体内の水分が枯渇して身体の深部では微小血管がさらに細くなり、血液や物質の流れが悪くなる(末梢組織の血流低下)と考えられています。 そこで間歇的に補液をすると細くなった血管がまた開いて末梢組織の循環改善につながります。 また、細小血管が開くことで深部から老廃物を掻き出す効果が期待できるそうです(こちらに関してはあくまで理論上です)。

【画像】I-HDF画像

逆濾過によって透析膜の内側に付着した老廃物やたんぱく質を洗い出してくれるため、膜が洗浄され膜性能の経時的劣化を防ぐことができます。

除水によって生じる循環血液量の減少抑制による血圧維持効果があります。 ただし、補液を行うため当然行った補液分の除水も必要となり、一時間あたりに行う除水量はかなりきつくなります。 なので補液量を一定ではなく、後半に多くしたり前半に多くしたりするプログラムを組んで行うIHDFもあり、血圧が下がるタイミングによって補液量も調整し、患者さん個々に合わせた治療ができるといった特徴があります。

これらより、IHDFは透析治療の際に血圧低下が度々みられる方、高齢者の方や疲れを感じやすい方に有効とされています。

【画像】補液バランス概念

透析液へのこだわり

よりクリーンな透析液を目指して

当院では、患者様が常に安心して透析治療を受けていただくために、透析液の清浄化にこだわっております。 エンドトキシンや生菌の基準値を下回るために、スタッフが徹底した水質管理を行うのはもちろんのこと、透析液供給システムの上流に位置する透析用水作製装置(以下、RO装置)を始めとして、清浄化に貢献できる装置を導入しております。

透析用水作製装置 MIE

【画像】透析用水作製装置 MIE

出典:日本ウォーターシステム(株)の HP より

透析に使用する水を作製する装置です。 水道水よりも純度の高いRO水を精製します。 当院では熱水消毒が可能な設備を整えております。

設備面で導入のハードルが高いシステムですが、熱水消毒は耐性菌のリスクもなく、薬剤を用いないため薬液残留のリスクもないなど、クリーンで確実な効果を得られる消毒法です。

熱水消毒の範囲は、RO装置内の全塩素を除去する活性炭フィルターから透析用水を作製するRO膜、RO水ラインまでです。
活性炭フィルター以降は無塩素エリアのため菌類が発生しやすい環境ですが、定期的に熱水消毒することで菌類を死滅または不活性化することができ、清浄化を維持しています。

【画像】水質自体も高純度なRO水を作製

また、水質自体も高純度なRO水を作製しています。 RO膜から出た濃縮水は通常捨てられますが、濃縮水専用のRO膜で再ろ過し透析用水としても使用可能な純度の処理水を水道水と混合することで必然と良質なRO水を作製できます。 無駄なく水道水を使用することで白河市の自然環境保全にも貢献していきます。

全自動溶解装置 DAD-70Si

【画像】全自動溶解装置
出典:日機装(株)の HP より

透析用水作製装置によって精製されたRO水と透析剤を混ぜ、透析液の原液を作成する装置です。 密閉回路内で透析剤を溶解することで、透析剤開封時の粉の飛散や外気に触れることで発生する交差汚染を防ぎ、透析液原液をクリーンな状態で作製します。 また、ストッカー上部にHEPAフィルター付き空気清浄器を搭載し、ろ過された外気を装置内へ取り込み陽圧にすることで、微粒子の侵入を防止します。

HEPAフィルター付き空気清浄器を利用することで、DAD-70Si内の空気を清浄に保つことができます。 透析用剤ボトルの上部は二重フィルムで覆われており、装置へのボトル搬入時は、外側のフィルムのみ剥がします。 内側のフィルムは循環溶解ラインにセットされる直前に自動的に開封されるため、清浄性が保たれます。

【画像】HEPA フィルター付き空気清浄器
HEPA フィルター付き空気清浄器
【画像】透析用剤ボトルの二重保護フィル
透析用剤ボトルの二重保護フィルム

その他にも…

RO装置で作成した透析用水は、水質管理基準を十分に満たしていますが、RO水ラインに限外濾過膜(キャラクターC・クラレ社製)を設置し、さらに清浄度を高めております。 また、透析液ラインにも限外濾過膜(キャラクターC・クラレ社製)を設置、透析装置には微粒子濾過フィルター(カットール・日機装社製)を直列2本設置し、透析液の清浄度も高めております。

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