睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、夜間に繰り返し起こる無呼吸・低呼吸により、血液中の酸素が低下したり、頻繁に中途覚醒が発生したりすることで、身体に様々な悪影響をおよぼす病気です。主に上気道の狭窄や閉塞によって引き起こされ、舌や軟口蓋が喉に落ち込んで気道が塞がれることが原因とされています。
特徴的な症状がいくつか存在します。 ここでは代表的な症状を7つ紹介しますので、参考にしてください。
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状
- 睡眠中に呼吸が止まってしまう
睡眠時無呼吸症候群の最も特徴的な症状は、眠っている最中に呼吸が止まってしまうことです。眠っている時に呼吸が止まり酸素不足を身体が感じると、呼吸をするために目を覚まします。再び眠りだすと、再度呼吸が止まってしまい、何度も同じ症状が繰り返されます。 この症状は主に3つのタイプ、閉塞型・中脳型・混合型に分類され、大部分は閉塞型です。閉塞型の場合、口や鼻から肺への空気の通り道、特に喉の部分が狭くなり症状が発生します。 肥満体型の方は、脂肪が多いため空気の通り道が狭まりやすく、注意が必要です。 中脳型では、呼吸をコントロールする脳の働きが低下することで呼吸が止まります。混合型は、名前の通り閉塞型と中脳型の両方が組み合わさり、症状が起こるタイプです。
単なるいびきとは異なり、呼吸が止まってしまうと健康へ大きな影響がでてしまいます。 特に肥満体型の方は、注意が必要で、症状がある場合は早めの対応が求められるでしょう。 - 血液中の酸素濃度が低下
血液中には、ヘモグロビンが存在し、このヘモグロビンは酸素を運搬する働きがあります。 睡眠時無呼吸症候群によって、呼吸が止まってしまうと、酸素が取り込めずヘモグロビンが酸素を運搬できません。その結果、血液中の酸素濃度が低下してしまいます。血液中の酸素濃度の指標としては動脈血酸素飽和度(SpO2)が使用され、パルスオキシメーターという機器で測定可能です。 健康な場合のSpO2の値は96%以上ですが、重度の睡眠時無呼吸症候群の場合、70%を下回ることもあります。健康な方が富士山の山頂まで登った場合のSpO2が約86%なので、70%を下回るということは、非常に血液中の酸素濃度が低下している状態です。 血液中の酸素濃度が低下すると、様々な健康リスクが引き起こされる可能性がありますので注意してください。 - 日中の強い眠気
睡眠時無呼吸症候群になると、繰り返し呼吸が止まるため、何度も睡眠が中断されます。つまり深く良質な睡眠がとれなくなってしまうのです。 そのため、十分に睡眠時間をとったつもりでも、日中に強い眠気を感じてしまいます。 日中の強い眠気は、日常生活・仕事・勉強に大きな支障をきたす可能性が高いでしょう。 特に運転など一瞬の判断を求められる状況での眠気は、重大な事故につながる可能性がありますので、注意してください。 - 高血圧
睡眠時無呼吸症候群によって血液中の酸素濃度が低下すると、心臓が身体の酸素不足を補うための働きを強め、血液の循環量を増やそうとします。 心臓の血液を送り出す働きが強まり、血液の循環量が増えると、血管に負荷がかかり高血圧を引き起こす可能性が高まるのです。 高血圧とは、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の状態を指します。高血圧になると、脳卒中や心臓病のリスクが高まります。 - 動脈硬化
動脈硬化は睡眠時無呼吸症候群がもたらす恐ろしい症状の一つです。 血液中の酸素濃度が低下すると、身体が酸素不足を補うために心臓の働きを強め、血管に持続的に負荷がかかります。 持続的に負荷がかかった血管の壁は硬くなり、動脈硬化が引き起こされるのです。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクとしても高まります。 - 血糖値やコレステロール値の上昇
血糖値やコレステロール値の上昇も、睡眠時無呼吸症候群の症状です。睡眠時無呼吸症候群になると慢性的な睡眠不足に悩まされることになります。 慢性的な睡眠不足は大きなストレスとなり、ストレスにさらされると交感神経が刺激されます。交感神経が刺激されると、アドレナリンなどのホルモンが放出され、血糖値やコレステロール値が上昇してしまうのです。 - 生活習慣病を引き起こすことも
血糖値やコレステロール値が上昇すると、糖尿病や動脈硬化などのさまざまな生活習慣病や、生活習慣病の前段階であるメタボリックシンドロームが引き起こされる可能性があります。 生活習慣病とは、日常的な生活習慣が原因となり発症する病気のことをいい、がん・脳血管疾患・心疾患・動脈硬化・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などが含まれます。
以上のように睡眠時無呼吸症候群は、日常生活にも支障をきたす重大な病気のため、早期の治療が大事です。
当院では、持続的自動気道陽圧装置(CPAP)を用いた治療にも対応しております。
CPAP治療
CPAPとは機械を用いて圧力をかけ、マスクを介して空気を鼻から気道に送り、空気の通り道を広げて無呼吸を防止する治療法です。
圧力の大きさは、病状に応じて医師が判断します。 中度〜重度の睡眠時無呼吸症候群の方に標準的治療法として、数多く採用されています。
個人差はありますが、CPAP療法をはじめると、使ったその日からいびきをかかなくなり、朝もスッキリ、昼間の眠気も軽くなることもあります。 反対に、慣れるまで1ヶ月以上を要する方もおられます。 CPAP療法は、対症療法であり、SASの根本的な治療法ではありません。
CPAPの使用をやめてしまうと、また症状が出てきますので、継続することが重要な治療法です。重症患者さんにおいては、CPAP療法を受けなかった患者さんより長生きしていることもわかっています。
CPAP治療の費用について
CPAPレンタルの仕組み
基本的には、毎月1回以上の受診費用と機器レンタル費用が必要になります。 レンタル費用には健康保険が適用されます。(毎月1回は必ず受診してください。)
CPAP治療を行うまでの流れ
問診などで睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査(簡易PSG)を行います。 簡易PSGにて、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上であり、かつ上記の症状を伴う際にSASと診断します。
重症度は、AHI5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症としています。
スクリーニング検査(簡易PSG※)
自宅に検査機器を持ち帰り、呼吸・いびき・体内の酸素飽和度を記録します。
精密検査(PSG※)
1泊2日の入院で、頭や顔、体の必要な部位にテープで電極を貼り付け、実際に一晩眠りながら脳波や呼吸、眼球、筋肉の動きなどを記録し、睡眠の状態について詳しく調べます。 ※PSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)
当院では入院精査を行っておりませんので、必要な際は、連携医療機関様をご紹介させていただきます。
検査結果でCPAP治療を開始します。
簡易検査にてAHIが40以上の患者さんは、精密検査を行わずに保険適応でCPAP治療が開始できます。
AHIが15~40の患者さんは、保険適応でCPAPを開始する場合、1泊2日の入院精密検査が必要となるため、精密検査が可能な医療機関様へご紹介させていただきます。
精密検査(PSG)でAHIが20以上の患者さんは、保険適応でCPAP治療が開始できます。